ミニ講話 宮司のいい話
NO.176  呼 吸
     我々が普段なにげなくしている呼吸もいざ止まってしまえば死んでしまいますが、実は呼吸とは命を維持するだけのものではなく、不思議な力が働いているのです。

     例えば、手で重いものを持ち上げようとする時、まず腰を落とし、しっかりと構え、大きく息を吸い込み、下腹に力を入れてエイッと持ち上げます。しかし、息を吸いながら持ち上げようとしたらどうでしょうか。ぜんぜん力が入らず、重たい物は持ち上げられません。

     息を止めた時や吐き出した時に強い力が発揮されます。しかし、息を吸っている時には踏ん張りが効きません。

     このように何かをする時には、非常に呼吸の使い方が大切になってきます。

     武道や格闘技では、呼吸が大変重要です。息を吸っている時は踏ん張りが効きませんので、そこを攻撃されるとスキとなりもろさが出てしまいます。ですから、相手に自分の呼吸を読み取られないようにすることが大切になってきます。そして、息をため、あるいは一気に吐き出すことによって自分の力を爆発的に発揮することができるのです。

     日本舞踊を見ましても、目や指先のこまやかな動きの中に、呼吸による絶妙な表現力を感じます。

     私は、詩吟をやっていますが、やはり、間の取り方、息の溜め方、息の出し方等の呼吸の使い方によって、感情を表現します。

     運動でも芸事でも、上達するに連れて、呼吸の使い方が非常に大切になってきます。

     以前、歌舞伎俳優の市川猿之助の十変わりという舞台をテレビで見たことがあります。数秒間で早変わりをしたり、舞台の下手に消えたと思ったら、アッという間に、上手から出てくるなど、すさまじい動きの中でも、息を切らさずに演技をしています。息を乱さない秘訣について、猿之助が話していました。

     舞台の裏では、全速力で階段を駆け上ったり降りたりして、移動するそうですが、階段を上る時は、途中で息継ぎをしないで、息を吐きながら一気に駆け上ると、疲れないそうです。又、激しい動きをする時も、息を吐きながら動くと息が乱れないそうです。

     地下鉄の階段を上るのは辛いですが、猿之助の極意によって、息を吐きながら一気に駆け上ると疲れないかもしれません。

     このように、何げなくしている呼吸でもいざ何かをする時には大切なものとなってきます。

     精神のこもった呼吸は、人を変え自分を変える力となります。

     一喝によって、瞬時にその場の空気を緊張に変えることができます。それはその人の精神が一喝のもとに満ちあふれ伝わったからです。一喝とは、一息に全精神を込めて大きな声で相手を叱りつける、精神の発露です。

     思いをふっ切るという言葉があります。呼吸によって自分の心を切り替えることができるのです。決意をした時、“ヨシ”と自然に出てくる言葉によって、素早く行動を取ることがあります。これも心が呼吸に伝わり行動をかりたたせたからです。

     呼吸は常に心と連動しています。ビックリしたり、怒ったり、強く心配事をしたりすると、心臓が強く波打ち、呼吸が速くなります。反面、呼吸が穏やかな時には、心も安らかで、くつろぎと余裕があります。

     人間本来の能力と知恵は、心安らかな中で発揮されます。心落ち着かず取る行動はどこか抜けてしまいます。

     ですから、大事件が起きた、あるいは大変な心配事ができた時、心臓が破裂してしまうほどにドキドキしてきます。そして呼吸が荒くなってきます。そんな時こそまず、高まる心を静め呼吸を整え、自分が今何をすべきか、心落ち着かせてしっかりと考えるのです。必ずや良い思案が出てくるでしょう。

     心を落ち着かせるためには、呼吸を落ち着かせなければなりません。精神統一は呼吸の統一なのです。

     呼吸を整え真剣に考えたならば、物事に立ち向かう、気力、知恵、勇気、そして素晴らしいアイデアがわき出てきます。人間の神秘的な力を充分に発揮するカギが呼吸にあります。呼吸には不思議な力が秘められているのです。

     呼吸に意志が伝わると言葉になります。言葉にも呼吸と同じく不思議な力が秘められているのです。呼吸をもっともっと研究してみましょう。自分の中に隠れている才能を引き出せるかもしれません。



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