ミニ講話 宮司のいい話
NO.157  情は人のためならず
     『情は人のためらず』ということわざがあります。このことわざは、二つの意味で解釈されているようです。

     一つ目は、〈人に情を掛けると、その人を甘やかしてしまうことになり、いくいくは、その人のためにならない結果になってしまう〉と解釈することです。

     二つ目は、〈人に情をほどこすと、めぐりめぐって、やがては自分によい報いがめぐってくるので、人のために情をほどこしているようであるが、実は自分のためにしていることになるのだ〉と解釈することです。

     若い人の中で、前者の解釈をしていることが多いようです。

     本来の意味は、後者の方で、めぐりめぐる縁によって、やがては自分に返ってくることを諭していることわざです。同じような、めぐりめぐって自分に返ってくる意味合いの『立つ鳥後をにごさず』ということわざがあります。これまでの地位とか場所を明け渡すとき、後のことを考えて見苦しくないようにすることのたとえです。とかく人間は、腹立たしく思って立ち去るとき、あとのことは構わないという考えになってしまいます。もう二度と戻ることも会うこともないと思って、普段ガマンしていた不平や不満を全部吐き出して、喧嘩別れをしても、その後お世話になった人や、子どもがお世話になった人が喧嘩別れをした人の親戚であったり、親しい間柄であったりして、ビックリしたり、気まずい思いをしたりすることもあります。人の縁というものは、どこでどう結びつくか分かりません。醜態をさらけ出してしまい、後から恥をかいたり、気まずい思いをしないように、人間関係のつき合い方を教えてくれていることわざなのです。

     この二つのことわざは、自分には直接関係ないように思えても、めぐりめぐって、やがては自分にかかわってくることのたとえを教えています。人に良いほどこしをすると、やがては良き縁となって自分に返ってきます。反面、人につらく当たると、やがては悪い縁となって、自分が苦しまなければならない情況となって返ってきます。
     
    「因縁」という言葉は、原因があって結果が生まれることを意味しています。ですから、いいことも因縁、悪いことも因縁なのです。

     ものの例えに『風が吹くと桶屋が儲かる』という話があります。これは、風が吹くと砂ぼこりが舞って、目を患う人が増えて、外を出歩かなくなる。そこで、家の中で習い事でも始めようかとなり、昔は三味線を習う人が多かったので、三味線が良く売れるようになる。三味線は猫の皮でできているので、猫が減っていく。猫が減るとねずみが増えてくる。ねずみが増えると、家の中を走り回るので、棚から桶が落ちてこわれたり、ねずみが桶をかじって使えなくなるので、桶屋が儲かる。だから、「風が吹けば桶屋が儲かる」という話になるそうです。

     あくまで例えですので、確率的には非常に縁遠い話ですが、昔のことなら全くないとは言い切れない話だと思います。これも、やはりめぐりめぐっていく縁について語られているのです。

     私達は、決して一人では生きていけません。お互に助け合い多勢の人達とかかわりあって生きています。だいぶ前の話ですが、私は雪道で車が埋まってしまい、困っている時、ダンプカーの運転手さんが止まってくださり、牽引して助けてくれました。私はとても嬉しく感謝しました。その運転手さんはどなたか分かりませんので、お目にかかることはないと思いますが、その運転手さんのお陰で、ダンプの運転手さんは優しい人というイメージを今でも私は持ち続けています。

     そして、雪道に埋まった車を見掛けると、当時のことを思い出し、その恩返しのつもりで率先して助けてあげるようにしています。そして、助けられた人が又、どなたか困っている人を助けてあげたならば、思いやりの輪がどんどんどんどん広まっていくと思うのです。その広がりの輪の中に、再び私も助けられる時がくるかもしれません。

     見知らぬ人に、何かお世話になったら、見知らぬ人に何か思いやりを掛けてあげましょう。そうしたなら、世の中にどんどんどんどん心の通った温かい出会いが増えてきます。そして世の中が明るくなってきます。世の中が明るくなると、自分の心も明るくなり幸を感じることができます。ちょっとした、人への思いやりが、めぐりめぐって世の中を明るくし、自分をも幸にしてくれるのです。

     「情は人のためならず」自分のためなのです。



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