ミニ講話 宮司のいい話
NO.142  あと二週間の命としたら
     もし、あなたの命が、あと二週間しか生きられないとお医者さんから言われ、実際に二週間しか生きられないとしたら、あなたは残された二週間をどう生きますか?

     どうせ死ぬんだから、思い切り好き勝手なことをして死んでいこうと思いますか?

     ある大学の教授が、学生に同じような質問をしたそうです。二十歳前後の若い人達なので、その教授は、好き勝手なことをして死んでいくと大半の学生が答えるだろうと想像していたそうです。

     だけど、きままに、わがままに過ごすと答えた人は誰もいなく、自分史を作りたいとか、何かを書き残していきたいとか、表現はそれぞれ違っても「人間に生まれてきて良かったというような二週間を送りたい」と、みんなが答えたそうです。

     あなたも同じように、自分が生まれてきた証を何か残そうとして過ごしますか?

     それとも好き勝手なことをして過ごしますか?

     よーく考えて見ると、いくら美味しい物をたくさん食べても、好き勝手なことをしても自分の心は満足しないかもしれませんね。自分なりに一所懸命生きてきたことを誰かに知ってもらいたい。自分が生きてきたことを忘れないでもらいたい。切羽詰ると、願うことは、自分の存在を残していきたいと思うのかもしれません。

     あなた達は、まだまだ若いから、死ぬのはずっと先で、「死ぬことすら考えたこともない」と言うかもしれません。

     「あと二週間しか生きられない」と仮定して、あなたも真剣に考えてみてください。

     私達は、将来は何かいいことがあるだろうと、希望と夢を持って今を生きています。とりあえず今という現実を生きています。お腹が空けば何か美味しい物を食べたい、お金は少ないよりたくさん儲けた方がいい。あれが欲しい、これが欲しい。あれもしたい、これもしたいと自分の欲望を満たすために努力しています。

     だけど「あと、二週間の命」と覚悟したならば、自分の欲望などどうでも良くなってくると思うのです。

     お金をたくさん儲けてもあの世には持って行けません。きれいな服や宝石をたくさん持っていても、あの世には持って行けません。土地や財産がたくさんあっても、あの世には持って行けないのです。名誉や、地位をいくら自慢しても、あの世には持って行けないのです。自分の欲望を満たすために、この世で築いたものは、自分が死んでしまえば何も残らないのです。

     人間生きていくためには、着る物も、食べる物も、住む所も必要です。しかし、衣食住を満たすためにだけ我々は生きているのではありません。人間として生まれ、自分がこの世に生きた証を残していきたい、後世の人に何かを伝えていきたいと願うのが、人間として自然な姿だと思います。

     家庭を大切に守っていく、社会や国のために、あるいは、人類や世界のために貢献していく。自分のためにではなく、人のため、社会のために自分の力を尽くすことが、自分がこの世に生きた証を残すことになるのです。

     人を喜ばすことによって、自分の存在が認識されるのです。生きた証を残すことができるのです。

     自分のためにだけすることは、人が喜ばないので、自分の存在が認識されず、自分が死んでしまえば何も残らないのです。誰かを喜ばすために、私達は生きているのかもしれません。

     現在日本では一年間に自殺する人が、三万人以上いるそうです。交通事故で死ぬ人の数倍になります。高齢化社会になってくると、お年寄りの自殺者が増えてくるのです。若い時は、家族のために、会社のためにと一所懸命働いてきたのですが、歳を取って会社を退職し、子ども達もみんな独立して、自分を必要としなくなった時、自分の人生に生き甲斐をなくしてしまい、寂しさのあまり、自殺を考えてしまうのではないでしょうか。

     衣食住が満たされても、生き甲斐がなければ、人間は楽しく人生を送ることができません。人生の価値は、人のために、社会のためにどれだけ尽くすことができたかによって決まってきます。現在の平均寿命が八十歳位だから、自分はまだまだ五十年や六十年はは生きられるぞ、と思っても、自分の命がいつ終わるのかは誰にも分かりません。長い長いこれからの自分の人生を二週間に凝縮して考えてみましょう。

     自分のためにだけではなく、人のために何か役立てたいと思ったならば、長い人生があるとは思わずに、いつ死んでもいいように、一日一日を少しずつでも誰かを喜ばすために生きていきましょう。そうした積み重ねが素晴らしい自分の人生となっていきます。



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